『キャシアン・アンドー』第1話〜第4話 - レビュー

反乱の狼煙

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本稿はDisney+のドラマ『キャシアン・アンドー』第1話〜第4話のネタバレなしレビューです。


キャシアン・アンドーが登場し(そして、去っていった)映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』では、ジェダイがいない反乱軍という、それまで描かれることのなかった部分に焦点が当てられた。その5年前を舞台としたDisney+のドラマシリーズ『キャシアン・アンドー』は、カメラには映らないところにあるベテランたちの確かな技術と、カメラの前にいる俳優たちの慎重で抑制のきいた演技で、より大人っぽいトーンの「スター・ウォーズ」となっている。見事に設定された舞台で謎が少しずつ明かされていき、『キャシアン・アンドー』は最初の4つのエピソードで強い第一印象を与える。

さんざん使い古された例ではあるが、第1話のオープニングでは1982年の名作映画『ブレードランナー』を思い出さずにはいられない。どしゃぶりの雨、暗闇に浮かび上がるネオンサイン、響いてくる音楽のリズム、そしてブラウンのコートに身を包んで歩く主人公と、要素がすべて揃っている。だが、思い起こすものとしてはそれも悪くないはずだ。全12話のドラマシリーズ『キャシアン・アンドー』の最初の4つのエピソードでは、現代的なスパイ・スリラーの要素を取り入れ、薄汚れたSFノワールのトーンを再現しようとしているように思えるからだ。

ショウランナーのトニー・ギルロイは、これまでにも陰謀やスパイものを手がけてきた。それらのストーリーには、絶対的に大きく邪悪な存在を倒すために、倫理的にはグレーゾーンといえることに手を染めていくキャラクターが登場する。「ボーン」シリーズ4作品の脚本家であるギルロイは、過去20年間で最も鋭い脚本だといえる『フィクサー』を手がけた人物でもある。これらの実績に加えて『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の共同脚本家であるということを考えると、彼がこのプロジェクトに選ばれたことにもじゅうぶん納得できるだろう。そして重要なのは、その納得の経歴が作中で見事に活かされているところである。

「ボーン」シリーズを監督したポール・グリーングラスやダグ・リーマンは今回は参加していないが、アクションの多くはジェイソン・ボーンのそれとかけ離れてはいない。『キャシアン・アンドー』の地に足のついた感覚は、「スター・ウォーズ」でいつも見るライトセーバーのデュエルや最近の作品では見慣れてきてしまったブラスターの雑な戦闘からは少し離れたところにあり、新鮮だ。ただ、実際のところ『キャシアン・アンドー』の最初の数時間には、取り立てて言うほどのアクションシーンはほとんどない。始終ものごとをひっくり返すのではなく、ひとつずつ思慮深く配置していっている感があるといったほうがいいだろう。

『キャシアン・アンドー』には成熟度の高さが感じられる。これは「スター・ウォーズ」シリーズ作品すべてにあるとは言い難いものだ。並外れた能力を持つ家族の話から抜け出せなくなっているのでもなければ、その家系に実った「スカイウォーカー」という果実の中毒になっているのでもない。大きな声では言えないが、セクシャルなものを匂わせようとする試みさえこのドラマにはある。これは「スター・ウォーズ」関連作品が、もっと広い意味ではディズニーが、これまでずっと避けてきたことだ。

だからといって、『キャシアン・アンドー』は大人しか楽しめないドラマだという意味ではない。しかし、予想以上に深いところまで視野に入れた作品であることは間違いない。しっかりとした脚本というのは、最近の「スター・ウォーズ」関連のプロジェクトに強く望まれてきたものだ。ごく自然な会話にはユーモアもあるが、何かに目配せしているわけではない。キャラクターが意味のあるやり取りをできるように時間を割いてあるだけで、「クローン・ウォーズ」のキャラクターをカメオ出演させるためのお膳立てや、ファンサービスのネタの提供が目的ではないのだ。

映像にもチープに見えるところはなく、むしろ最高品質のテレビで観る特別な作品のように感じられるが、これはたまたまではない。このシリーズでわれわれが目にしているのは、熟練の技師による撮影技術なのだから。ジョナサン・フリーマンとアドリアーノ・ゴールドマンは、それぞれHBOの『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』とNetflixの『ザ・クラウン』でエミー賞を受賞している。第1話~第3話を担当するゴールドマンは、トラッキングショットとステディカムショットを多く取り入れ、それを適切な量のクローズアップと組み合わせて、観ている人とキャラクターをつなげる。ローアングルやウエストの高さにあるカメラは、ささやかながらも抵抗している人々とともにあるのだというメッセージを伝え、その結果、彼らとのつながりをより強く感じさせる。すべてがじっくりと考えられており、偶然そうなったという部分はないだろう。ストーリーを伝えることにおいて、レンズの位置を決める人々は、その前で演技をする俳優たちと同じくらいクリエイティヴな仕事をしているのだ。

ディエゴ・ルナはキャシアン・アンドーという主人公をごく自然に演じてみせる。第1話では『グッドフェローズ』風のマフィアがいそうなバーでいさかいが起こるが、このシーンを通して、終始シリアスなキャシアンのキャラクターがよくわかるようになっている。最初はあまり言葉を発しようとしないキャシアンだが、その目の奥にちらつく弱さ、そして思わず引いてしまった銃の引き金が、最終的には彼についてのすべてを物語ってくれる。サバイバーの臨機応変さとパラノイアの感覚をうまく組み合わせたルナの演技は、非常に達者である。

どのキャラクターの言動もとても人間らしく、今後のストーリー展開に必要な情報をしゃべるだけの装置にはなっていない。アドリア・アルホナ演じるビックスはそのパーフェクトな例だ。ビックスが画面に登場すると温かみが感じられ、彼女とキャシアンの短い対話の中にも、ふたりの間に長い歴史があることがわかる。そしてステラン・スカルスガルドやフィオナ・ショウといったベテラン勢も外せない。彼らはそこにいるだけでもその重厚感でシーンを高め、『キャシアン・アンドー』が特別な作品であるという雰囲気がさらに増してくる。

『キャシアン・アンドー』の敵役については、比較的新鮮なものが脅威として描かれているところがうれしい。「スター・ウォーズ」ではダース・ベイダーが最もアイコニックな敵であるというのは常に変わらないのだが、すべての作品で目にするくらいひんぱんに登場すると、その存在の恐ろしさが薄れてきてしまう。かたや『キャシアン・アンドー』の敵は、制服を身につけた抑圧的な行政機関の職員たちだ。結果として、それがより脅威を感じさせるものとなっている。邪悪さの体現者としての役割を最初に果たすのは、カイル・ソラー演じる捜査主任カーンだ。キャシアンの捜索を率いることになる彼は、その役割にふさわしく卑屈で、彼の陰険な笑顔が画面に現われるといまいましさを感じずにはいられない。しかし、外の顔は冷淡だが、彼も内側には複雑さを抱えているようだ。

(C)2022 Lucasfilm Ltd.

第1話はシリーズ全体のトーンを作るための素晴らしい働きをしている。キャシアン・アンドーというキャラクターを再び紹介し、彼の共謀者たちのなかで誰が信用できるのかを少しずつ描いていく。第1話の多くのシーンで舞台となる小さな産業都市は、小さな銀河系のようなものとしてうまく機能している。帝国軍による混乱のさなか、誰もが敵のような気がしてくる場所だ。そこには、選ばれた数人が語るストーリーを追うというよりも、現実世界で実際に生活している人々とともに時を過ごすような手触りがある。

ネタバレなしで説明すると、第2話ではそれぞれのキャラクターの背景や行動の理由などがくわしくわかるようになっている、といえる。大きなプロットに突入していくのは第3話と第4話だ。話のギアが切り替わるのもここからで、登場人物たちは大きな賭けに出て、どの扉の影にも危険が潜み、同盟が形成され、そして、壊される。第3話は特にスリリングだ。街中に鳴り響く金属の音は、「ロード・オブ・ザ・リング」で戦いを告げるゴンドールの烽火を彷彿とさせる。

しかしながら、キャシアンの子供時代のフラッシュバックに何度も切り替わるところではわずかに失速する。これらのシーンはストーリーのためには必要で、彼の過去とこれからの行動の動機となるものの理解に役立つ。ただ、メインキャストが登場するシーンに比べるとインパクトに欠けることは否めない。とはいえ、第3話の終わりに近づくにつれて、これらのシーンもだんだん実を結んでくる。ふたつの状況を行き来するクロスカッティングが巧みに編集されているおかげで、静かに、それでいて力強く感情に訴えかけてくるものになっている。

最初の4つのエピソード全体のペースが多少もたついていると思う向きもあるかもしれないが、筆者個人としては楽しめた。ストーリーが着実に明らかになっていくところが、ディズニーからリリースされる最近のMCUや「スター・ウォーズ」関連作品の多くと比較して、新鮮に感じられた。語り口のペースを落として、作品が生み出す空気に浸りきることを恐れていない。くり返しになるが、戦闘シーンの合間にハイパースピードであれこれ挿入されるのとは異なる構成は、意図的に大人向けに作られているように感じる。

Disney+の「スター・ウォーズ」のドラマシリーズは質においてはバラつきがあるといえるかもしれないが、音楽はいつも素晴らしい。催眠効果のありそうなパーカッションが響くルドウィグ・ゴランソンの『マンダロリアン』も、名曲の数々にひねりを加えたナタリー・ホルトの『オビ=ワン・ケノービ』もそうだ。今回、ニコラス・ブリテルがそこに加わった。第4話までで流れた音楽は、ドラマ『サクセッション』のテーマように、聞けばすぐにそれとわかるようなものではないものの、ストイックな弦楽器、ぶつかり合うシンバル、冷たく粗い響きの鐘の音などから彼らしさを感じる。その音楽がギルロイの作る緊迫した映像に加わると、浮かんでは消えるキャシアンのパラノイアにパーフェクトにフィットしてくるのだ。

総評

『キャシアン・アンドー』は、キャストの見事な演技、スパイものとして抑制の効いたトーン、考え抜かれた作りで、素晴らしいスタートを切った。たまたま「スター・ウォーズ」の世界が舞台となっているが、「スター・ウォーズ」ドラマとしてとても良いだけでなく、ドラマというカテゴリー全体としても記憶に残る作品となれるだろう。意図的にゆっくりと作られたペースとシリアスなテイストは、アクション満載の楽しいSF映画を求める人たちの好みではないかもしれないが、いまのところ、この作品は「スター・ウォーズ」のフレッシュな新種となっており、しっかりと考え、作り込まれたものだと感じられる。反乱軍の誕生に向けて、このまま正しい方向へ進み続けてくれることを願っておこう。

※本記事はIGNの英語記事にもとづいて作成されています。

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『キャシアン・アンドー』第1話〜第4話 レビュー
9
Amazing
『キャシアン・アンドー』は視聴者を引き込む演技とスパイ・スリラー風のトーン、考え抜かれた作劇で素晴らしいスタートを切った。