スプラトゥーン3 - レビュー

対戦ゲームのある種の理想形に

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対戦ゲームに必要なものとはなんだろうか? 優れたゲームバランス、コミュニティを盛り上げる要素、プレイヤーにストレスを与えない仕組みなど、いろいろと考えられる。そして、『スプラトゥーン3』はその答えを見つけるに至ったゲームである。

今回レビューする『スプラトゥーン3』の何が優れているのか、先に結論をいうと「スプラトゥーンという世界を作り出した」部分だ。単なる対戦ゲームではなく、“対戦ゲームをメインに据えたひとつのテーマパークのような世界”であり、これはある種の理想形なのである。

このような抽象的な物言いでは何の話かわからないと思うので、レビューとしてひとつずつ説明していこう。なお、本レビューは発売から約2週間後に執筆している。『スプラトゥーン3』は2年間の無料アップデートが実施されるので、あくまで作品の序章しか確認できていないことは留意してほしい。

「優れたリミックス」といえる『スプラトゥーン3』のバトル

「スプラトゥーン」シリーズは、ヒトの姿になれるイカやタコたちがインクを塗り合って戦う対戦アクションシューティングである。つまり、基本は対戦ゲームなわけだ。

メインとなるのが4対4でインクを塗り合って陣地を奪い合う「ナワバリバトル」。本作でも基本的なルールは変わらず、新ステージや新たなスペシャルウェポン、そして弓型のブキ「ストリンガー」や、カタナのように振り回す「ワイパー」が追加された。

ステージも新しいものが用意されているが、過去作のものも多い。「まったく新しいバトル」というよりは、「新旧一体となったリミックス」と表現すべきだろう。

これまで「ガチマッチ」と呼ばれていたモードは「バンカラマッチ」に変わったが、ルールは同じである。ガチエリア、ガチヤグラ、ガチホコバトル、ガチアサリの4種類がプレイでき、ここに新ルールが欲しかったのが正直なところだ。

とはいえ、全般的に遊びやすくなったのは評価すべきである。ナワバリバトルやバンカラマッチではフレンドとチームを組んで戦うことができるようになったし、ギア(キャラクター性能を変える衣装)のコーデを登録できるようになったり、待ち時間に試し撃ちができたり、あるいはロビーにフレンドの様子が表示されたりと、基本が同じでもこれらの仕様のおかげでかなり遊びやすい。

また、リミックスとしても優れている。たとえばステージは『スプラトゥーン2』のものと『スプラトゥーン3』のもので設計思想が異なっており、これがうまくプレイ感覚を変えてくれるのだ。

「2」のステージは相手の防衛網を抜けて横や後ろから攻撃しやすいのだが、一方「3」のステージは正面から相手とぶつかりあいやすい。これにより使うブキや戦略も変化してくるわけで、よりバリエーション豊かなバトルが楽しめるようになった。

「ヒーローモード」や「ナワバトラー」もかなり遊びごたえアリ

そして、脇を固めるそのほかのモードも重要だ。ひとりプレイ用の「ヒーローモード」は、過去作の設定・システムを活用した集大成となっている。

過去作のヒーローモードはチュートリアルの要素が強かったが、今回は『2』のDLCである『オクト・エキスパンション』のシステムに近く、初心者から上級者まで遊べるひとり用モードを実現している。

プレイヤーが任意で使うブキを選べる(難易度を調整しやすい)形式であり、かつステージ中に収集品の探索が存在しない。世界設定がわかるファイルなどはハブ部分で集める形式になっているため、ステージの細かいところまで探し回る面倒な作業もなくなったし、各ステージも純粋にアクションを楽しめるわけだ。

また、ストーリーもかなり重要だ。「Return of the Mammalians(哺乳類の帰還)」というサブタイトルが掲げられているように、今回は海洋生物が支配するはずの地球に何かが戻ってくる。シオカラーズやすりみ連合といったキャラクターも集結するので、ヒーローモードだけでもかなり遊びごたえがあるといえよう。

仲間と一緒にシャケを狩るアルバイト「サーモンラン」(いわゆるPvEモード)も、基本は過去作と同じだがさまざまなイベントが追加されている。

本作では、地面から大きな口を開けて登場する「ドロシャケ」が現れたり、「オカシラシャケ」と呼ばれる巨大なボスが登場する。前作から存在するカンケツセンのイベントは初見殺しの仕様になっていたのだが、それも初心者が何も知らずに遊んでも問題ないよう調整されていたりと、要素の追加・調整が行われ順当に進歩した印象だ。

また、『スプラトゥーン3』では、ナワバリバトルを題材にしたカードゲーム「ナワバトラー」が登場している。これは150種類以上あるカードを集め、デッキを組んで1対1で対戦するという内容だ。

カードはそれぞれで塗れる範囲が異なっており、より多くの陣地を獲得したほうが勝利となる。相手の陣地を妨害する巨大なカードで一気に攻めたり、あるいはスペシャルポイントを溜めて敵陣に強引にカードを置いたりと、カードの種類が多いだけあって戦い方も思った以上に多い。

現在はCPUとしか対戦できないが、このモードは将来的にオンライン対戦が実装予定だ。ガチ対戦ができるのはもちろん、好きなキャラクターのカードを集めた趣味デッキなどでものんびり遊べそうだ。

ハブだった街も進化し、収集要素も楽しめるように

もうひとつ忘れてはならない『スプラトゥーン3』の新要素がある。それは街と収集要素だ。

本作の舞台は混沌の街「バンカラ街」。室外機やステッカーでごちゃごちゃしたアパートや、たくさんの広告、飲食店やフィギュアショップなど、上記モードに関係ない要素も作り込まれている。

過去作の街はあくまで単なるハブという印象だったのだが、今回は見て回るだけでもかなり楽しい。フェスでは大きな山車が練り歩いたり、空中にネオンサインでユーザーのイラストが表示されたりと、見ごたえも増している。

また、グラフィックの品質も向上している。これはカンブリアームズなどのショップがわかりやすく、背景の小物の数が増えたうえに、前作と異なりくっきりと描写されているのだ。バトルステージでもダンボールが配置されていたり(もちろん撃てば吹き飛ぶ)、同ハードながらもきちんと進歩しているのが感じられる。

音楽も相変わらず見事だ。場所を移動するたびに聴こえるサウンドが変化する仕掛けはもちろん、ロビーでは過去作BGMが流れるニクい仕掛けも用意されている。バトルBGMも新しいものもあれば、初代のアレンジ曲が用意されていたりと(かつ、初代のバンドがメンバーを一部変えて再活動しているという設定まで用意されている)、至れり尽くせりである。

バンカラ街には「ザッカ屋」と呼ばれる新しい店があり、ここではロッカーに飾れる雑貨を購入できるほか、バトルするたびに各種景品がもらえる「カタログ」(いわゆるバトルパスに該当する要素)も用意されている。

ロッカーは好きな人だけがやればよい要素ではあるのだが、用意されている雑貨の種類が豊富なのでこれが意外と楽しい。各種ブキ、ステッカー、イカ型のクッション、マンガ、服や靴など、プレイヤーの性格を反映させられるだけの要素がしっかりとあるのだ。

カタログではエモート(勝利時のモーション)、ネームプレートにつけられる二つ名、各種ギア、ナワバトラーのカードなどが入手でき、地味ながらこれが遊び続けるモチベーションになる。そう、『スプラトゥーン3』はプレイサイクルがよくできているのだ。

『スプラトゥーン3』の優れたプレイサイクル

ここまでバトル、ヒーローモード、サーモンラン、ナワバトラー、収集要素と本作の各要素を紹介したが、実はこれらが非常にうまく噛み合っているのが『スプラトゥーン3』最大の長所なのである。

本作の各モードをプレイすると、以下のように違うモードも遊びたくなるのだ。

  • バトル:新たなブキ・お金・カード・収集品など多くのものが手に入るため、自然と各モードの要素が充実していく。
  • ヒーローモード:バトルの基礎練習になり、各ブキの特殊な練習にもなっている。難しいステージをクリアできればバトルでもそのブキを使える自信がつく。カードや収集品なども手に入る。
  • サーモンラン:いろいろなブキを触れる機会があるうえ、お金やギアが集まりやすい。ここでしか手に入らない収集品も存在するため、バトルや収集要素とも深く関わる。
  • ナワバトラー:特別なエモートやネームプレートなどが入手できるので見せびらかしたくなる。
  • 収集要素:他プレイヤーに見せられるので、マルチプレイに参加したくなる。お金を大量に使うため、バトルやサーモンランのプレイを促す。

どのモードを重点的にプレイするかはプレイヤー次第だが、いずれにせよほかのモードも遊びたくなる流れがきちんと作られている。かつ、さまざまなモードがあることで、他者と戦うことをあまり望まないプレイヤーも「スプラトゥーン」の世界を楽しめるような構造になっているわけだ。

筆者は基本的にバトルを重点的に遊びたいはずなのだが、ナワバトラーもサーモンランもついプレイしたくなり、自分が『スプラトゥーン3』に取り込まれてしまいそうな状況である。

そう、『スプラトゥーン3』はもはや単なる対戦ゲームではなく、PvEやカードゲームや収集要素も充実させることにより、ひとつの大きな流れを作り出しているのである。そしてバンカラ街という場所やサウンド、ストーリーや世界設定なども充実させており、「スプラトゥーンという世界」を成立させているのだ。

革新性のなさは否定できず、不具合などの課題も多い

とはいえ、『スプラトゥーン3』は完全無欠の作品というわけではない。前述のとおり、バトルに関しては新規要素が少ないのは事実で、優れたリミックスではあるが革新的ではない。

また、今回は過去作と比較しても不具合が多い。発売直後はゲームがそもそも起動しない、インクが出なくなるなどの重大な不具合も抱えており、正直これはかなり困ったものだ。とはいえ、大きな不具合の報告および更新データの配信は素早く、挽回はできているだろう(執筆時点でもまだ問題は存在するが)。

なお、『スプラトゥーン3』は発売後3日間で国内販売本数が345万本を突破しており、かなりプレイヤー数が増えた状況だ。そのせいか通信エラーの頻度も高く問題といえるわけだが、これは各プレイヤーの環境に依存する問題であると考えられるため、この点に関して解決は容易ではないかもしれない。

ほかにも細かい問題はいろいろとある。たとえば、フレンドとバンカラマッチを遊ぶときに「カスタマイズして続ける」を追加してほしいし、ナワバトラーへアクセスするためのショートカットもほしい。今後の課題が存在するのは確かだろう。

いずれにせよ、『スプラトゥーン3』はこれまで積み上げたものを非常にうまくリミックスしているのは間違いない。本作は2年間の無料アップデートが実施されるうえに、テンタクルズが登場する有料DLCまで予定されているのだ。今後の展開によっては、さらに評価が上がる可能性もあるだろう。

長所

  • 過去作の要素をうまく活かしたバトル
  • アクションゲームとして質の高いヒーローモード
  • カードゲームなど、対戦以外の要素も充実
  • グラフィックやサウンドも進歩
  • 「スプラトゥーンという世界」そのものが楽しめる

短所

  • 革新的ではない
  • 不具合が多め、わずかに不便な仕様がある

総評

『スプラトゥーン3』は、「対戦ゲームをメインに据えた、ひとつのテーマパークのような世界」を作り出した理想的なゲームである。優れたプレイサイクルによって対戦、協力プレイ、カードゲームなどがうまく循環し、何時間でもこのゲームを楽しめてしまうのだ。もはや単なる対戦ゲームではなく、「スプラトゥーンという世界」そのものになったといえるだろう。

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スプラトゥーン3

開発元/Developer:Nintendo Entertainment Planning & Development
Publisher:Nintendo
リリース日:2022年9月9日
Platform / Topic: Nintendo Switch
スプラトゥーン3 レビュー
9
Amazing
『スプラトゥーン3』は、「対戦ゲームをメインに据えた、ひとつのテーマパークのような世界」を作り出した理想的なゲームである。優れたプレイサイクルによって対戦、協力プレイ、カードゲームなどがうまく循環し、何時間でもこのゲームを楽しめてしまうのだ。
Nintendo Switch